カミグセ「SとNの間の香り」 作・演出 つくにうらら(カミグセ)

2016 12.22 thu - 25 sun @space EDGE

公演の詳細はhttp://www.kamiguse.comより


クラウドファンディング実施中!

「カミグセ『SとNの間の香り』再演製作支援プロジェクト」



なくてよいのだ

親友Hと出かける約束をしていたのだが、迫る仕事の締め切りと、それに伴っての心身の不調があいまって、急なキャンセルをしてしまった。

そのHとの約束はいつもなら意地でも遂行するのだけれど、どうしても家から出られなくなってしまって、目の前が真っ暗になった。

こんなこと、とにかく珍しい。

 

それで、彼氏のゆづひこ(あたしンちのユズヒコに口元が似ているのでそう呼ぶことにする)に仕事が終わったらすぐ帰ってくるようお願いし、単純作業な仕事から納めていくことにした。

 

嘘は言いたくない、という気持ちが高ぶったせいで、主に自ら文章を認めなければいけないゼロイチの作業が全て滞る。

昨晩遅くまでゆづひこが作ってくれた骨組みを元に色々と書き連ねてはみたものの、だんだんと己のよそ行きな文体に、心が剥離した。

 

リビングの白熱球が計4つも切れてしまい、残るはベッドサイドの心許ないクリップライト1つのみ、そんな部屋にいたのだから当たり前に辛気臭くなる。

とはいえこんなに暗い気持ち、久々だったのだ。

 

ゆづひこが急いで帰宅し、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。

お酒とオレンジジュース、おまけにハーゲンダッツまで買って、これからピザまでとるという。

その優しさが少し眩しいが、ゆづひこも数日前まで高熱で寝込み、その節には私が甲斐甲斐しくしたのだから、多分おあいこだ。

 

ゆづひこ曰く、書けないところは無理して書かなくてよい、とのことだった。

とはいえ、書けないなら書けないで、またそういう自分に失望的にならざるを得ない。

結果的に、ゆづひこが帰ってきてからも、何度も何度も躓いてしまったが、ゆづひこはそのあいだ中もずっと、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。

 

全ての工程が終わった頃にちょうどピザが届き、最近のピザの耳になんか色々入れるのすごいと思いながら、海外ドラマを観つつピザを食べる。

ドラマが終わって、入稿前の文章ををゆづひこが丁寧に確認、それでここ数日の悩みはデータとして送信された。

 

この3日、ほとんど眠ることができていなかったので、早々に22時ごろ布団に入ることになった。

二人ともスコンと眠りに落ちた、が、私ひとり2時過ぎに目が覚めた。

 

オレンジジュースを3杯飲む。

私が一度眠ってから夜中に目覚める、というのはとても珍しいのである。

在り方がよく分からず、ガブガブと一気飲みをして、冷えた胃の辺りに後悔した。

 

日頃眠りの浅いゆづひこも、今日はそっぽを向いて静かに寝息を立てている。

うなされやすい人なので、こんなにも穏やかに寝ているととても起こすわけにもいかない。

仕方なくひとりでごろごろしていたが、たまらなくなりゆづひこを起こした。

 

また、ゆづひこ曰く、眠れないならば無理して眠らなくてよい、とのことだった。

目を瞑り横になれば睡眠と似た効果があるからいいのだと。

そうして私を抱き寄せ、我々は落ち着いた。

 

横向きに寝転がって抱きつく時、必ず下側になる腕は邪魔になる。

だいたいの人類がこれだけ生殖を命題的に掲げて生きているのだから、もっとなにか別のあり方が出来たのではないか。

 

みんな、この腕はどうしているんだろう、という疑問の末、人類はまだまだ進化の途上なのだから仕方がない、その体勢がつらいならば無理してその体勢でなくてよい、という気分になり、ゆづひこの腕の中でもぞもぞと、居心地の良い体勢に変わった。

 

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